風呂やトイレ、キッチンなどの水廻りには必ずコーキング処理が施されている。
コーキングは防水材であり、水の侵入を防ぐものであるが、建物の中で比較的劣化が早く、寿命を迎える。寿命を迎えるということは、コーキング部分が切れてそこから水が浸入し、内部が腐ってしまう恐れがある。
また、コーキング部分は汚れやカビが発生しやすく、清掃しても完全には取れにくい。
必然的に建物を永く維持するためにはコーキングの打ち替えは不可欠である。
コーキング打ち替えのたびに業者を呼んで施工してもらうと金額も大幅にかかってくる。
そのため、できる部分はDIYでも可能となる。
今回は初めての方にもわかるよう、コーキングのDIYによる施工方法を詳細に解説する。
また、業者に依頼すると何が違うのか?費用は?などの疑問についてもお答えしていく。
コーキングをDIYで打つ方法
コーキングをしている場面はご覧になったことがある方も多いのではないだろうか。プロは簡単にやっているが、実は難しい。
DIYで行う場合はより慎重に行う必要がある。
次からDIYで行う場合の手順を紹介する。
準備する材料・工具
①コーキング
②コーキングガン
➂カッター
④ペンチ
⑤コーキング用ヘラ
⑥マスキングテープ
⑦雑巾
⑧カワスキ(スクレーパー)
⑨軍手
※ここからは可能な限り
⑩塗装用シンナー又はペイントラッカー
⑪プライマー
⑫プライマー用はけ
①~⑨は必需品となり、安価で購入も可能である①のコーキング以外は100円(税抜き)程度で購入できる。
②のコーキングガンは安いホームセンターで100円(税抜き)程度にて購入できるが、その他の材料はホームセンターでは100円以上してしまうことがある。
しかし100円ショップで揃えることもできるので安価に済ませたい場合はオススメである。
①~⑨を100円ショップで揃えても品質に大きな影響はない。
シンナーやラッカーはコーキングで周囲や衣服が汚れた際に利用すると大変便利である。ヘラについたコーキング材を掃除するときもかなり便利である。
しかし、色落ちしやすい場所(ペンキ仕上げ等)の箇所に使用すると元の塗装まで落としてしまうことがあるので注意が必要である。また、臭いが強い為、換気が必須となる。
ヘラの選び方
コーキングヘラの選択は非常に重要となる。ヘラの大きさ、形によって仕上がる形が決まってしまう。
まず、コーキングを施す場所の『幅』を計測しておく必要がある。
例えば、幅が5㎜であれば5㎜以下のヘラは使用できない。5㎜以下は、5㎜も含まれる。
幅が4㎜未満であれば5㎜のヘラ
4㎜以上9㎜未満であれば10㎜以下の使用が望ましい。
コーキング幅より2㎜~4㎜程度大きいものを選ぶと施工しやすい。1㎜程度大きくても施工は可能だが、難易度が高くなる。
市販のコーキングヘラは大きさが決まっているものが多いのでこの限りではないが、実際の幅に一番近く、少々大きい物を選ぶとよい。
形は半円形をしているものが施工しやすい。三角形のようなものは、様々なコーキング幅で使用できる。力の入れ具合、設置角度の調整で如何様にもできる。しかし、難易度が高い為、未経験者、初心者向けではない。
手順1:既存のコーキングをキレイに除去する
今あるコーキングを取り除くことから始まる。使用工具は③カッターと④ペンチである。
コーキングの両サイドにしっかりとカッターを入れる。
イメージとしては現在付着している箇所と“縁を切る”感じで切っていく。
切り終わったら、ペンチでゆっくり取り除いていく。
取り除いている途中でうまく取り除けない場合はカッターを入れながら徐々に取っていくと良い。
コーキングにカッターを入れる際は十分に注意が必要となる。
想像以上にコーキング部分は堅いので、力を入れる必要がある。
その際に誤って手等を切って怪我をしてしまう事例が多々あるので注意が必要となる。また、カッターの刃が折れて目に入る可能性もあるので十分に配慮が必要である。
手順2:除去後、できるだけキレイに清掃する
コーキングを切除したあとも細かい残りカスが残っているので、カッターを使ってしっかりと綺麗にする。
溝の内部にも細かいコーキングが残るので、雑巾でできるだけ拭き取る。
表面に細かいコーキングが残っていると、新しいコーキングを施工した際、凸凹とした見た目と感触が残るので、表面はできるだけきれいにする。
手順3:マスキングテープを張る
コーキングを施工する箇所にマスキングテープを貼ります。
マスキングテープを張った通りに仕上がるので、真っすぐ綺麗に貼ります。
隅にギリギリで貼ると、コーキングは乗りません。隅から1㎜~2㎜程度離して貼る。
マスキングテープは剥がしやすいように、端部を長めにしておくと、剥がすタイミングが楽となる。
手順4:コーキングを打つ
マスキングテープをキレイに貼り終えたら、実際にコーキングをしていく。
ここで、余裕のある方は、準備工具⑪のプライマーと⑫のプライマーハケを使う。
プライマーはコーキングの密着をより良くする性質がある。これにより、より防水性が上がるとされている。基本的にはプロは使用している。
コーキングの先端をカットして、コーキングガンにセットする。
コーキングをする箇所にコーキングを充填する。
量は多めで構わない。少ないと綺麗に仕上がらない場合もある。
充填が終わったら、ヘラで均す。
ここがコーキング施工で最も難しいところである。
ここからヘラでゆっくりとコーキングを均していく。
力を入れすぎずにゆっくりと均すことによって、キレイに仕上げることができる。
一気に仕上げようとせず、10cm~15cmほどならしたら一度持ち上げ、ヘラについた余分なコーキングをスクレーパーできれいに取る。
ここもポイントで、ヘラについた余分なコーキングを取らなければキレイに仕上げることはできない。
この作業を繰り返していき、コーキングを仕上げる。
手順5:マスキングテープをはがす
マスキングテープは、コーキングを均し終えたらすぐに剥がす。
渇いてから剥がすと、仕上げたコーキングも一緒に剥がしてしまう恐れがあるからである。
また、剥がしたマスキングテープは周囲につけることなく捨てるようにすることである。
周囲にマスキングテープをつけてしまうと、その後の清掃作業が面倒になる。
手順6:一定時間放置する(絶対に触らない)
コーキングは季節に応じて多少異なるが完全に硬化するまでおよそ24時間かかる。
8時間あれば表面は硬化しているので風呂等の利用は問題ない。
しかし、8時間未満の表面硬化がしていないうちに触ってしまうと、表面が崩れてしまい、全て1からやり直しになってしまうので十分注意が必要である。
簡単そうで実は難しいコーキング
コーキングは力の入れ具合等できれいにできるかどうかは変わってくる。
その絶妙な力の入れ方の違いや、均し方によって仕上がりのできが大幅に異なる。
プロも経験値で腕前が大きく異なる。
ただ、風呂場のような直線は比較的簡単なので馴れれば必ずうまくできるようになる。
もしも失敗した場合は、一度全てきれいに乾かし、手順①から再度やり直すときれいになる。
業者に依頼すると何が違う?
DIYと業者では一体何が違うのだろうか。
DIYで行えば材料費だけで済み、3000円もあれば施工することができる。
しかし業者に依頼すれば数万円の予算が必要となる。
専門業者へ依頼すると、自分で施工するよりも何が優れているのかを確認していく。
見た目やスピードが別格
プロは、マスキングテープを張る作業からスピードはけた違いである。
見た目も、凹凸等もなく滑らかできれいな仕上がりになる。
DIYで初めてコーキングを行う場合、要領を得るまでには、どうしても時間がかかってしまう。その時間や高いクオリティを、費用で確保するかどうかが判断基準となるだろう。
その中でも、見た目を重視したい来客が多い場所や、人の目に触れやすいところはプロの専門業者に依頼したほうが良いだろう。
業者に依頼する場合は風呂以外も頼もう
専門業者に依頼する場合は、風呂場のコーキング改修だけでなく、トイレ廻りやキッチンといった内部の水廻りも一緒に依頼する方が賢い選択となるだろう。
専門業者に依頼する場合は、事前打ち合わせの為に現場(改修箇所)を見に来る。
その場合、気になる場所を含めて見積りを依頼すると、オトク感がわかるだろう。
優良で実績豊富な業者であれば、気になる箇所を見てもらった際には、補修が必要かそうでないかを、素人にもわかるように説明してくれるはずである。
もちろん、まだ補修の必要がない箇所まで補修させようとする悪徳な業者も残念ながらいる為、少しでも疑問に感じる場合は、納得いくまで質問を求めてほしい。
業者に依頼する場合のメリット・デメリット
業者に風呂場のコーキングを依頼するメリット・デメリットは、前述通り施工精度と金額の差である。
DIYではトータル数千円で済むところが、業者に依頼した場合数万円かかり、およそ10倍の金額差が発生してくる。
これが業者に依頼する場合のデメリットとなるだろう。
ただし、見た目やスピードはDIYでは到底追いつくことはできない。
さらに、コーキングの真の目的は『防水性』である。
風呂場等の水廻りでは、内部に浸透させない、隙間を発生させないことを目的としているので、DIYの場合は隙間が発生してしまうリスクがあるが、プロであれば回避できる。
水分の浸透は建物全体の寿命に大きく左右してくるので、プロに依頼すれば安心である。
良い業者と悪い業者の見分け
良い業者は、実際に現地を見て、予定数量と、予定色を細かく確認していき、見積りと内訳も丁寧に記されている。
さらにコーキングの色は多くあり、その希望色まで丁寧に説明、検討してくれる。
対して、電話やネット申し込みのみで対応している場合はあまり良い業者とは言えない。
細かい色は実際に目で見なければわからない。
さらに、見積りも「一式」など曖昧な記載で丁寧に書かれていない場合は、あとから追加料金を理由付けて請求される可能性があるので、注意が必要である。
風呂場のコーキングの予算
専門業者に依頼するデメリットが金額であることを紹介したが、細かく例を踏まえて予算を紹介していく。
ここでは一般的な家庭で使用されている風呂場の大きさを目安に検討する。
DIYの場合の予算
コーキングの材料費はホームセンターでおおよそ500円前後である。
その他の材料費をホームセンターで取り揃えたと仮定する。
ただ、全体的に高価な工具はないので3,000円~4,000円程度で購入することが可能となる。
コーキングは1本あたり5~6mは使用でき、一般的な風呂場であれば2本あれば予備も含めて十分だろう。
材料費と工具を合わせて5,000円~6,000円程度が予算とる。
さらに、施工が思うようにできず、硬化する時間を十分に確保できなかった場合、風呂は使用できない。
その場合、近所の銭湯にいくことも考慮すると4人家族で2,000円~3,000円程度。
まとめると、7,000円~9,000円程度でDIYによるコーキング改修が可能となる。
業者依頼の場合の予算
業者に依頼する場合、よく『メートル単価』で例が挙げられていることがある。
メートル単価というのは1m施工するのにいくらかかるか、ということであるが、コーキングの場合の相場は600円~1,000円程度である。
これは2mだけで依頼すれば2,000円程度で施工が可能になるというわけではない。
専門業者に依頼して、作業員が来るという過程で、2万円~3万円程度発生する。
それに材料費が上乗せされる。
メートル単価が適用されるのは、工事現場などの施工数量が多い環境で適応される。
一般住宅の場合は
人件費で25,000円~30,000円程度
材料・消耗品費で5,000円~10,000円程度
諸経費等で、5,000円~10,000円程度
これらを合算すると30,000円前後~50,000円程度となる。
(地域や環境による)
プロに任せた場合、9時からスタートすれば10時には完了する。
その場合完了時から8時間後の18時には風呂が使用できるので、銭湯代は発生しない。
午後に施工した場合でも夜間の入浴が可能であり、銭湯を利用する場合は上記の金額を合算すれば予算として考慮することができる。
風呂場以外にコーキングを依頼する理由は予算にあり
専門業者に依頼するときの料金体系詳細は以下の通りとなっている。
・材料費、消耗品費(工具費)
・人件費(人工“にんく”と呼ばれる。)
・経費、交通費
以上のような料金明細になっており、前述通り、材料・工具費に大きな金額は生じない。
人件費はプロの現場(工事現場等)が専門業者に依頼する場合は1日あたり20,000円~25,000円程度(地域や情勢・施工箇所による)となっているが、一般の方からの依頼となると、やや高めに設定されていることが多い。
その場合、1日1人に依頼すると、来てもらうだけで、数万円の料金が発生する。
材料費の割合が少なくなるため、どうせ依頼するのであれば風呂場以外にもトイレ廻りやキチン廻り等の水廻りで気になるところは全て依頼した方がオトクである。
高所で足場を組み立てなければいけない場合等に関しては、別途料金が発生するので注意が必要である。
コーキングの種類
コーキングの種類は大きく分けて4種類、現在一般的に使用されている。
どのコーキングを使用するかは、使用箇所・使用方法・使用目的で異なりそれぞれの適材適所がある。
コーキングの種類と特徴を紹介する。
シリコン系
最も一般的なコーキング材である。
耐久性・耐候性・耐熱性・耐水性・密着性に優れており、最も万能的なコーキング材料となる。風呂場等、家庭内の水廻り部分ではこのコーキング材が最も適している。
屋外でも使用することができ、防水工事にはよく使用されている。窓ガラスの廻りにほどかれているシールもシリコンである。
ただし、塗装をすることができないので、色を付ける部分に関しては使用することができない。
変成シリコン系
変成シリコンも万能タイプである。
変成シリコンは、シリコン系で弱点である塗装ができない、という部分を補っている。
塗装をしたいところは変成シリコン系が良いだろう。
さらに、金属面通しのコーキングにも適している。
補修としても使用され、コンクリートのひび割れ補修の際にも使用される。
ただし、密着性がシリコン系よりも劣っている為、一般的にはプライマーを併用し、密着性をあげている。
またべたつきやすく、ホコリやチリがくっついてしまうことがある。
耐候性面では優れているが、外部で使用すると、砂ぼこりが付着し、汚く見えてしまうここともある。
ウレタン系
ウレタン系コーキングは、耐久性に最も優れている。耐久性が強いがゆえに、外装の隙間を埋める『目地シーリング』に使用されている場合が多い。
さらに、塗装も可能であるため、壁を塗る場合にも心配ない。
しかし、紫外線に弱く粘着性によるホコリを吸いつけ易いというデメリットもあるが、それらを補うのが塗装となる。
紫外線に強い塗料を上塗りすることにより、そのデメリットを克服することができ、耐久性に優れているというメリットのみ残る。
アクリル系
コーキングは基本的に湿っている部分、水分を有している部分には使用できない。
しかし、アクリル系は湿った箇所にもしようすることができる。
実は耐久性等に弱いため、改修工事ではあまり使用されない。
アクリル系はあまり見かけなくなった。
1液タイプ、2液タイプの違いとは
コーキング1液タイプと、2液タイプが存在する。
一般的に、1液タイプは市販で販売されている円柱形のコーキング材である。
封を開け、空気に触れると次第に硬化していく。
対して、2液性はシーリング材と硬化剤を混ぜ合わせ、さらにそれに色を付ける。
硬化剤を混ぜなければ空気に触れても硬化しない。色の調合も融通がきく。
耐久性も2液性の方が高い。
しかし、内容量が多いためDIYではお勧めできない。
混ぜる場合も均等に混ぜることが難しい。
プロに依頼しても、水廻りのみの改修であれば1液で対応するだろう。
耐久性や、色のメリットを考慮して2液性を希望する場合、材料費が跳ね上がるので注意が必要である。
まとめ
コーキングをDIYする場合、他のDIYと比較すると道具や工具を取り揃えることは容易である。
ただし、思っているよりも難易度が高く、キレイに仕上げることが難しいということは、実際に体験するとわかるだろう。
しかし、経験すれば徐々に上手くなっているということもあるので、目立たないところから少しずつはじめていくのもよいだろう。
不安な方も、専門業者に依頼するか迷っている方も、道具・工具の予算も低い為、ひとまずやってみても良い。
万が一思っていたより格段に難しく、失敗してしまっても、その後から専門業者に依頼しても遅くはない。
撤去・修正は、プロの手にかかれば手易い。
『やってみたい』と思っている方は、是非挑戦してみてはいかがだろうか。